本書は、北朝鮮に対する日本独自の経済制裁が国内政治に向けて積極的に作用した局面を分析し、国内における制裁の政治的効果の実相を把握するものである。本書で取り上げる経済制裁は、(1)2006年10月11日発表の経済制裁、(2)2016年2月10日発表の経済制裁、(3)2016年12月2日発表の経済制裁の3事例である。これら各事例の分析結果を政治的文脈で評価すれば、日本独自の経済制裁は、日本政府が北朝鮮による拉致問題に対する憤りやデフレで閉塞感を抱く国民の政治的要請に的確に応じ、毅然かつ断固たる姿勢を示し、実質的な意味での主権を取り戻す上で能動的な役割を果たしたと評価することができ、そしてそれはやがて日米同盟強化という政治的な文脈の中で、日本が「戦後レジームからの脱却」を主張する政治的なプロセスにおいて状況に適合し、能動的役割を果たしたものと評価できると主張するものである。